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 考えは一向に纏まらないが、ひとつだけ気になっていることがある。  共通点があるのは、悟志と夫だけではない。宮下もだ。  いや、あり得ない。だが、どう考えてもそうとしか考えられない。そんなことを考えていると、歩調も速まる。  いつもよりも早めに会社に着き、宮下を探すとやはり彼は既に出社していた。 「宮下くん、ちょっといい?」 「おはようございます」 「うん。おはよう。ごめんね、ちょっと見せて」  私は一言断って、宮下のおでこを間近で見た。 「これ……」  やはり、そこには赤い肉球のような痕がうっすらと浮かび上がっていた。 「どうして……」  私は疑問を口にしながら、自身の両手を見る。  まじまじと見ていると、くっきりとした肉球が徐々に手のひらに浮かび上がってきた。 「ちょ……なに? これ」  ミーの可愛らしい肉球と一緒だ。片方の親指でその肉球を触ってみると、ぷにりとしつつ少し固さもある猫特有の肉球の触り心地だった。  触った親指を見てみると、うっすらと赤くなっている。まるで、スタンプのようにこの肉球は触ったものに印をつけるのだ。 「ごめん。宮下くん、今日は体調が悪いから帰るって伝えてくれないかな。ホントにごめん。色々ごめん!」  口早にそう言って、私は走った。
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