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何故走っているのかもわからない。何故家に向かっているのかもわからない。家に急いで帰って、何がどうなるかなんてことも分からない。けれども私は、衝動に任せてひたすら走った。
家に着いた頃にはヨロヨロの体で、足にうまく力が入らないほどだった。
玄関の扉を開け、靴も脱がずに上がり口に膝をつけ、座り込む。
「どうしたら……」
床に手をつき、あるのかどうかわからない答えを探していると、ミーがいつもどおり出迎えてくれた。
「ミー……どうしよう。私、どうしたら良いのか……」
ミーを抱き上げ、不安を吐露する。
「皆にしっかりしてほしいとは思ってたけど、まさかこんなことがあるだなんて……」
「ミー」
ミーは、一声鳴いて、私の腕からするりと抜けた。
私の目の前に座り、片手を上げて手のひらの肉球を見せる。
「ミー?」
不思議に思い名前を呼ぶと、ミーはその手で手招きをする。私は自然とその手に自分の手をゆっくりと近付け、そしてミーの手と重ねた。肉球と肉球が、ピタリと重なる。
その瞬間、ふわりと不思議な感覚が身体を走る。
一体何が起きたというのだろう。
「え? ミー、なにかした?」
ミーが喋るわけもなく、愛らしくゴロゴロと喉をならしながら頭をすりつけてくる。
私は勘のようなものに動かされ、急いで宮下に電話をかける。
「あ、先輩。体調どうっすか? 先輩いつも頑張りすぎなんすよ~。伝えておきましたから、今日くらいゆっくりしてくださいね~! うわ。部長に呼ばれた。んじゃ、また明日っす」
宮下は電話口でそう言って、一方的に電話を切った。
「……戻ってる?」
反射的にミーを見ると、ミーは素知らぬ顔で丁寧に毛繕いをしていた。
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