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まさか、私があの時猫の手も借りたいと言ったから……?
そして、その効果が切れた?
まさか、本当にそんなことが……。
*
────数時間後、悟志が家に帰ってきた。
「ただいまー。母さん、腹へった。お菓子ある?」
その第一声で、悟志がもとの悟志に戻ったのだと確信する。
私はその場でペタリと座り込み、良かったと顔を覆った。
「母さん? 何かあったの? 俺にできることある?」
心配しながら、悟志は私の背中をさすってくれた。
優しい悟志が、帰ってきた。
その数時間後、今度は夫が手に色々とぶら下げて帰宅した。
「具合悪いんだって? ご飯買ってきたぞ。大丈夫か?」
夫がテーブルに広げたお弁当や飲み物は、きちんと三人分用意されていた。
後に、ソファーの側に丸めて脱ぎ捨てられた靴下を見て、夫のスタンプは消えなくても良かったかな?と、小声でミーに話しかけたのは秘密だが、ふたりの笑顔が戻ったこの家は、これまでよりも更に明るさを増した。
私は、今回の不思議な体験で、何よりも大切なものを思い出したような気がする。
「靴下! ゴミ! 片付けなさい!!」
「「はーい」」
言いたいことは、言わせてもらうけどね。
了
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