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 会社に行くと、早速上司に立て続けに指示を出され、それをミーティングで皆と共有し、仕事の流れを確認し合う。  私はミーティングが終わってすぐに、部下の宮下に声をかけた。 「宮下くん、どうした? 体調悪い?」  ミーティング中に辛そうな表情だったのが気になり、声を掛けたのだ。 「あ、すいません。昨日遅くまで飲んじゃって。仕事はできます」 「また? しっかりしてよね。顔赤いけど、熱はないよね?」 「あ、いや、大丈夫だとは思いますけど。ないっすよね?」 「知らないわよ。触っても大丈夫?」 「はい。お願いします」  宮下は、たいして長くない前髪を手のひらで押さえ、どうぞと促す。 「どれ」  触ってはみるが、私と比べてもたいして変わりはなく、熱はなさそうだ。遠慮なく仕事を振ろう。 「大丈夫そうだね。飲みすぎと寝不足だ。しっかりしなさい」 「はい。もう大丈夫です。失礼しました。では、仕事にとりかかります」  急に背を伸ばし、丁寧に頭まで下げた宮下には拍子抜けだが、どうやら大丈夫だと見て安心して仕事に取り掛かった。  その後も宮下は問題なく……いや、普段よりもしっかりと働いて、帰りには再度謝罪まで付け加えて退勤していった。 「しっかりし過ぎて逆に調子狂うかも」  苦笑交じりに呟いて、パソコンを閉じる。  今日は遅くなってしまった。時計の針は20時を超えている。二時間ほど前に夫に遅くなると連絡したが、大丈夫だっただろうか。  私が本格的に正社員として復帰してから、二年が経つ。それまでの期間も働いてはいたが、無理を言って正社員の枠からは外してもらっていた。  最近では大きな仕事も任されるようになり、残業も増えている。責任が伴う仕事はやりがいがあるし楽しい。とはいえ、同時に家のことまでこなすとなると、無理が出てくるのは致し方がないのかもしれない。  だが、いざ夫に家のことを任せるとなると、心配になり焦ってしまうのは、それまで当たり前のように家事全般を引き受けてきた女の(さが)なのだろうか。
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