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矢継ぎ早に不満をぶつけ、興奮して息が上がる私をよそに、夫は真っ直ぐにこちらを見て言葉を返す。
「わかった。今までごめん。きちんとするよ」
夫は立ち上がり、脱いだ靴下や弁当や缶ゴミを片付けた。テレビも消して、私に向き直る。
「これで良いかな」
表情もなく言う夫に、罪悪感が浮かんでくる。いや、一度これくらい言わなければと思ってはいたけれど……。
「ごめん。強く言い過ぎた。自分のことだけでもやってくれれば、私は大丈夫」
「わかった」
それからは、やはり落ち込んでいるのだろうか。言葉数も少なく元気のない様子だった。
翌朝、起きると隣に夫はいなかった。まさかの家出か?と一瞬思ったが、夫はキッチンに立っていた。
「おはよう。どうしたの? 珍しい」
フライパン片手に、夫が答える。
「自分の朝御飯くらい自分で作ろうと思って」
そう言って夫がダイニングテーブルに用意したのは、ひとり分の朝食だった。
「あの……私たちの分は」
「ない。君が、自分のことだけやってくれれば大丈夫と言った」
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