飲み会

4/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
村井君は私の手をまだ繋いでいた。 私の目の前に立ちはだかる様にして言った。 「江田さん、大丈夫ですか? 具合が悪そうですね。送って行きますから。 ここで待ってて下さい。」 村井君は私の手を離して、優しく背中をさすってくれた。 そんなに酔っていないけれど、酔っている様に見えるのかな。 村井君が居酒屋へ引き返すと、繋がれていた手を見つめた。 急に心許なく、言い知れぬこの寂しさはなんだろう。村井君に見つめられると、締め付けられる様な気分は何? 答えが見つからないまま佇んでいると、ガラガラと扉を開けて村井君が荷物を持って戻ってきた。 私のベージュのスプリングコートを肩にかけてくれた。 「鞄は持って来ましたが、携帯とか忘れ物は無いですか?」 「うん、携帯は鞄から出してないから。」 「それと課長に江田さんを送ってくると言ってきんで、大丈夫です。それじゃ、行きましょうか。 少し歩けますか?」 「1人で歩けるよ。」 「心配なんで。」 そう言うと肩に手を回して、私を支える様に歩き出した。 私は覚束ない足取りになっているのに初めて気付かされた。 年上の私が介抱されているなんて恥ずかしい。 私の肩に回された村井君の手は力強く、彼との距離が近過ぎて恥ずかしさが増して、ますます顔が赤くなっていった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!