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鬱病の診断を受けてから、どのくらい経っただろう。
一年、いや、二年だったろうか。
当時、催眠術を取り上げるテレビ番組が多かったらしく、姉の里美が「催眠療法」とやらを耳にしたらしい。
催眠を用いる心理療法のひとつ。
なかでも、「退行催眠」と呼ばれる療法は、「逆行催眠」とも言われ、前世で体験したことがわかると言われているそうだ。
前世で起きた出来事は、現世に影響を与えていると言われており、前世を知ることで現在苦しんでいる原因を掴むキッカケになる。
「前世療法」とも言われ、海外では医療に取り入れられているらしい。
私は輪廻転生を信じてはいるが、鬱病になってしまった原因は自分でわかっている。
そんな私が「催眠療法」など受けたところで何になるというのだろう。
日に日に壊れていく私を間近で見ていた母が、姉に相談でもしたのだろうか。
よりによって、姉が勧める「催眠療法」を行なっているメンタルクリニックの院長は、当時テレビによく出ていたドクターだった。
物腰柔らかく、高感度は高いドクターだ。
人気過ぎて、かなりの予約待ちだという。
私は全くといっていい程、興味が湧かなかった。
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