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「お金はお母さんが出すから、試しにやってみたらどうかな。」
母はそう言うが、お金の問題ではない。
一回二万円と高額ではあるが、出せない金額ではない。
そもそも私は、通っている精神科のカウンセリングも拒否しているというのに、態々都内まで足を運んでやる意味があるのだろうか。
自分の前世には多少興味はあったが、鬱病が引き起こす数々の不調によりそれどころじゃない。
しかし。
どういうわけか、その「催眠療法」とやらを受けることになってしまった。
夫が運転する車の後部座席に座る幼稚園児の息子は、お出掛け気分で楽しそうだ。
メンタルクリニックは、閑静な住宅街にひっそりと建つ、一見病院には見えない建物だ。
現在服用している薬などを記入し、軽く問診を行う。
例の有名なドクターの病院ではあるが、この日「催眠療法」を行うドクターは別の女性だった。
落ち着いた印象だったのを覚えている。
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