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別室に通されると、そこは比較的狭いエステルームの様な造りで、診察台より少しだけ幅広い寝台へ移動するよう言われた。
窓には遮光カーテンが引かれ、電気は常夜灯のように灯っているだけで、ドクターの顔がなんとなく見えるくらいだ。
小さく聴こえるヒーリングミュージックのような音。
寝台に仰臥位になった私の腹部に、何やらヒーリングストーンだかパワーストーンだかよくわからない石を置かれ、「それ」は始まった。
チリーン。
高過ぎず、低過ぎず、心地良いお鈴のようなものを鳴らし、ドクターの話すことに従う。
もう詳しい事は忘れてしまったが、
「目を閉じて ゆっくり呼吸をして」みたいなことを色々言われた気がする。
実のところ、私はこの時まで「催眠療法」を勘違いしていた。
催眠と聞いて、私は深い眠りにつき、眠っている状態の私が何か喋り始めるものかと思っていたのだ。
今考えると、もしそうならオカルトだ。
「催眠療法」である「退行催眠」は、嗅覚で感じ取る人、聴覚で前世の言葉を聞く人、頭の中に映像として流れる人、と人それぞれ違うらしい。
中には味覚まで感じる人もいるそうだ。
完全に眠ってしまうわけではなく、意識はしっかりしている状態で、ドクターの導きにより前世の自分を引き出すらしい。
(ちょっと待てよ‥‥催眠術って素直な人はかかりやすいけど、疑い深い人間には効かないと聞いたことがある。 だとしたら‥‥私は無理なのでは?)
万が一催眠にかからなかった場合はどうすりゃいいのだろう。
正直に言うべきなのか?
そんな不安を抱きながらも、私はドクターの穏やかな声と心地良い音色に、完全にリラックスモードに突入した。
嗚呼。このまま寝たい。
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