催眠療法

7/14
前へ
/15ページ
次へ
私の頭の中に流れる映像を見ているのは、紛れもなく現世の私。 しかし、私の口から出てくる言葉は、私自身の言葉ではない。 なんと説明すればいいだろうか。 私の肉体は現世の私のものに間違いない。 その頭の中に見る映像には前世のわたしがいる。 映像を脳内で見ている私の気持ちとは裏腹に、私が話す内容は前世のわたしなのだ。 「周りを見渡してください。何か見えますか?」 穏やかな声に私が答える。 「白い建物。十字架‥‥」 「あなたは何歳ですか?お名前は?」 「‥‥」 頭の中にいるわたしはまだ若い。二十歳くらいだろうか。 名前も年齢も、私の頭の中のわたしは教えてはくれない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加