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「ね、ゆうこりん出てこれるよね?
どーせ部屋で一人いじけてたんでしょ?」
「そんな…。ヤだよ。晃樹いるし…」
「その晃樹サマがアンタを呼んでるんだって。
場所は何日か前のグループLINEに書いてある通り、◯◯駅前の居酒屋“呑み助”だから。
そこからまだ動いてない。てか、晃樹のせいで二次会に移動できなくて困ってんだから。
ゆうこりんの家からだったら、ここまで30分もあれば来れるでしょ」
「無理無理無理。ネイル乾いてないし、すっぴんだし、髪もボサボサだし、そんなんじゃ晃樹の前に出られない…。
今から準備してたら最短でも1時間はかかるよ。だからゴメンね…」
「あっそ。じゃ、1時間後ね」
私が“ゴメンね”と断る前に、割り込むようにそれだけ言うと、スミレの電話は切れてしまった。
---圧、強すぎ…。
すっぱりと断ればよかったんだけど、正直どこかでもう一度晃樹に会いたいと思っている自分もいるのも確か。
そもそも晃樹とはケンカ別れした訳じゃなくて、円満に友達に戻っただけなんだから、友達として会いに行くのは、元からオッケーなはず。
ただアタシの踏ん切りが付かないだけで。
酔っ払った際の戯言かもしれないけど、晃樹がアタシを呼んでいると聞かされて、思わず心が揺れてしまった。
まだ元カレを友達として割り切って会う覚悟なんてできてないけど、一対一で会うんじゃなくて、グループの一人として顔を見るところから慣らしていったら、この“失恋”気分もいつか吹っ切れるかもしれない。
そう思い直し、アタシは重い腰を上げ、出かける支度を始めた。
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