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「ねえ?まさか晃樹、起きてるの?」
「ううん。寝てるよ」
「寝てるやつが返事するかっ!
…ってか、聞いてた?さっきの…」
「いや、全然?なんにも聞こえなかった」
横向きに寝転がっていた晃樹は、アタシから顔を逸らしたままそう言うと、うつ伏せになり、枕がわりの座布団に顔を埋めた。
それを見たアタシは動揺し、スミレに助けを求めるかのように視線を送った。
「やだー、晃樹起きてたんだー。私気づかなかったわぁ。ゆうこりん、ごめんねごめんねー」
スミレはニヤけながら棒読みでそう言うと、「さて、膀胱もピンチだし、トイレにでも行ってくっか」と一人どこか行ってしまった。
---スミレがニヤけてるってことは、やっぱり晃樹、少し前から起きてたってことじゃん。
まあでも、言ってしまったことは仕方ない。
アタシは酔った勢いに力を借りることにし、覚悟を決めて立ち上がると、まだ寝たふりをしている晃樹の元に移動した。
「ねえ、さっきの話聞いてたんなら聞いてたでいいんだけどさ。
寝たふりしたままでいいから、聞いて?
あれ、アタシの本心だから。
付き合ってた頃、アタシが晃樹の気持ちを汲み取れなくて、晃樹に寂しい想いさせてたって、反省してる。
友達関係に戻るって言ってたのに、今は友達を通り越して、他人同士になっちゃった。
よかったら、本当にもう一度友達からやり直してもらえないかな?
もちろん、恋人同士に戻るかどうかは、お試しでいいからさ。
でもアタシ、今度は間違えないから。
…って、ねえ、聞いてる?」
寝たふりをしている晃樹の頭がコクリと頷いた。
その肯定の意思表示は、恋人同士に戻る前提でもう一度友人からやり直すことに対する肯定なのか、それともただ単に、聞いてる?って質問への回答なのかは分からなかったけど、アタシはなんだか気分が良くなって、座布団に突っ伏して寝たふりをしている晃樹の横に座り、晃樹の髪を優しく撫でた。
「んだよ、オメーらめんどくせーなー。他人だとか友達からやり直すとかさ。好きあってる同士なんだし、ケンカしてた訳でも無いんだから、ダイレクトに恋人同士に戻りゃいいじゃん」
いつのまにかトイレから戻ってきていたスミレが、アタシらの背後に立ち、笑っていた。
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