Re:Start

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「あ、ゆうこりん、いま大丈夫? あんたの元カレがちょっと飲み過ぎたみたいで、“優子を呼べぇ”ってクダ巻いててさ。 ちょっとこれから出てこられない?」 「は?今から? もうすぐ夜の9時だよ?てか、アイツいるんでしょ?」 土曜の夜。一人暮らしのアパートの自室でネイルを乾かしていると、大学のサークル時代から続く友人の一人、スミレから電話がかかってきた。 “ゆうこりん”とはアタシのこと。 優子という名前は“ゆうこりん”というあだ名つけられがちだ。 小学校の時からずっと、進学して何度友達がシャッフルされようとも、アタシのあだ名はゆうこりんだった。 大学で入ったサークルでも、アタシの高校までを知る人は誰もいなかったのに、ついたあだ名はやっぱり“ゆうこりん”だった。 今夜は、その大学時代から続くサークルの同期の仲間での飲み会だったんだけど、アタシは参加しなかった。 いや、今夜だけでなく、その飲み会、かれこれ3回連続でスルーしている。 仲の良いサークル仲間の飲み会なのに、何故ここ最近参加していないのか。 理由は簡単。 そこには必ず元カレの晃樹(こうき)がいるからだ。 アタシと晃樹は大学時代から卒業までの4年間、周りから恋人同士と勘違いされるくらい仲のいい友人同士だった。 大学卒業後、彼が実家に帰ったのを機に一時期疎遠になってたんだけど、彼が転職して再びアタシのアパートの近くに引っ越してきて再会したのをきっかけに、何やら火がついて、今度は友人関係から恋人同士になった。 でもそれも上手くいかず…って、思いっきりアタシのせいなんだけど、彼から“恋人同士という関係を卒業して、友人に戻ろう”的な? そんなことを言われて友人関係に戻った。 …とは簡単に割り切れるはずもなく。 “恋人関係から卒業”して初めて気づく、晃樹への想い。 あまりにも学生時代の友人としての期間が濃くて長かったので、恋人と友人の違いを見いだせなかった。 アタシの認識では、肉体的なスキンシップ…、まあありていに言えば、キスとかエッチとか…を、するかしないかの差。 なので、ご飯食べたり遊びに行ったりするのは友達時代の延長にしか過ぎず、時々キスやエッチをしていれば恋人として成り立つと思っていたアタシ。 なので、晃樹にとって、アタシのスタンスは塩対応に思えてたのだろう。 でもその当時はそんなことに気づくこともなく。 だから別れ際、友人関係に戻ろうと言われても、キスやエッチをしなくなるだけで、それ以外は今まで通り変わらずにいられると、たかを括っていた。
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