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そんな漫才のようなやり取りをしていると、ソファに座る男子二人があぜんとしてこちらを見ていることに気づいた。
おっと、忘れてた……。
晴仁が一度咳ばらいをすると、二人に視線で促す。
すると、彼らは揃って立ち上がり、私と義明に向き直った。
そこでようやく気がつく。
二人の輪郭、目元。そっくりだ。
「双子?」
思わず口に出すと、片方が笑った。
「やっぱりわかっちゃいます? よく言われるんですよ、似てるって」
するともう片方が眉根を下げて、彼をたしなめる。
「こら、遠矢(とおや)。先に挨拶しないと。先輩なんだよ?」
遠矢と呼ばれた方は、はあい、とゆるい返事をした。
「……雰囲気は似てないみたいだな」
義明がぼそりとつぶやいた言葉に、私も心の中で同意する。
「あー、続けていいか?」
晴仁の声が割り込んだ。進まない会話に焦れたのだろう。
「この二人は陰陽寮甲信越支部から派遣された……」
「天野 遠矢(あまの とおや)です。こっちは兄貴の拓麻(たくま)」
あ、大人しそうな方が兄なのね。
間違えないように覚えておかなきゃ。
「この二人は最近対魔師になったばかりの新米でな。新人研修の名目でしばらくの間、お前らと一緒に行動させようと思っている」
……え。
「は」
「へ?」
隣を見れば義明も同じようなリアクションになっていた。
「……続きをいいかな?」
忠光の声に二人そろって頷く。
「まあ、理由は色々あるんだけど……君たちは年も近いから良い影響を与えあえるんじゃないかと考えてね」
「まあ、たしかに、ベテランの爺様婆様たちと組むよりはやりやすい……かもね」
「それともう一つ」
今度は晴仁が口を開く。
「三条、お前だ」
「私?」
ど、どういうことかしら。
さっぱりわからん、と義明を窺えば、彼は納得した様子でうなずいた。
「なるほど、ブキ、ですね」
「ああ。お前たち以外にもブキ使いは存在するが、ここまで破天荒――もとい、じゃじゃ馬な奴も珍しいからな……いい勉強になるだろう」
「今言い直した意味は⁉」
そんなにオブラートに包めてないからね!
「良かったな、褒められてるぞ」
「絶対違う」
またそんな漫才みたいなのを繰り広げていると……
「くっ、あはははっ……!」
よく響く笑い声に振り向くと、遠矢が腹を抱えて笑っていた。
「と、遠矢。失礼だよ……」
対する拓麻はおろおろしている。
「別に気にしないでいいわよ。いつものことだし」
「そ、そうですか……」
年も近いんだから、堅苦しい方が嫌だしね。
私がフォローを入れると、拓麻の表情が少し和らいだ。
「ホントに人間より、人間みたいだね、今日花さんって。これから一緒に行動するの、楽しみになって来たよ!」
笑いが収まったらしい遠矢は人懐こい笑みを浮かべ、私に手を差し出した。
「これからよろしく、先輩」
……うーん、この子やるわね。年上とかにすっごく気に入られそうなタイプ。
「よろしく、後輩」
差し出した手を握り返す。
――こうして、高校生対魔師・三条今日花と若松義明に後輩が誕生したのだった。
にぎやかな夏休みの幕開けである。
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