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2.守り刀と対魔師、夏休みの公園にて
天野兄弟は研修期間中、なんと私と義明の家にホームステイすることになった。
……というか、私がそうした。
だって、短期とはいえせっかくチームを組んで活動するんだから、少しでも時間は共有しておいた方がいいと思って。
幸いにして、築三十年のボロボロ一軒家には客間もある。
朝は義明の剣や対魔術の稽古に加わり、昼は陰陽寮から下された仕事を共にこなし、合間に街を案内する。
そして夜は、みんな揃って夏休みの宿題に頭を悩ませた。本来、私たち高校生だしね。
そんな、ちょっとした合宿状態の日々がスタートし、一週間。
天野兄弟の人柄や能力を、私と義明が把握するには十分な時間だった。
まず、兄の拓麻。
対魔師としての能力は、平均……より、やや下くらい。
特に飛びぬけて何かが得意というわけではなく、戦闘も術も、知識も新人ならこのくらいだろう、ってレベル。
性格は真面目でいい子。ちょっと大人しいかしらって感じ。
よく義明の食事作りとか、家の掃除とかを手伝っている所を見かける。
弟の遠矢のフォローに回ることが多いせいか、どことなく苦労人臭もするけどね……。
弟の遠矢は、兄とは正反対に人懐っこく、私たちと打ち解けるのも早かった。
まるで兄の外向性をお母さんのおなかの中で吸収してきてしまったかのようだ。
実は、能力的にも遠矢の方が二回りくらい優れていたりする。
要領の良いところもあるのか、知識の吸収も拓麻より早かった。
ただ、どうも調子に乗りやすいところがあるみたいで、そのたびに指導に当たっている義明の胃に穴が開きそうになっている。
「双子とはいえ、結構違っているところもあるのねぇ」
「まあ、似ている所も結構あるけどな。仕草とか、食事の時に何から手をつけるか、とか」
「……仲良くやれているようで何よりだ」
陰陽寮・筆頭室。
私と義明は、研修の報告をしろ、と晴仁に呼び出されていた。
ちなみに天野兄弟も一緒にここまで来たのだが、忠光に連れられてどこか別の部屋へと移動していった。
「それで? 今日呼び出したのはなんで? 報告だけじゃないんでしょう」
私が尋ねると、晴仁はああ、とうなずいてデスクの引き出しから何やら引っ張り出してきた。
机の上に広げられたのは、この街――金舞市の地図だ。
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