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エピソード3
「のどが渇いちゃって。」
女性が、真っ黒のコーヒーを口に含む。
「いえいえ、不思議な猫ちゃんですね。」
「そうですね。今でも、忘れられない思い出だと思います。」
掃除が終わらないバイト君は、まだ外にいる。2人しかいない店内で、古時計の針の音が妙に響く。
「続けますね。雨、まだ降ってますし。」
「ええ、聞かせてください。」
夏休みが終わると、クロに会うことはできなくなりました。学校が始まって、遊ぶ時間が夕方になった途端、クロは姿を見せなくなったのです。
考えてみれば、野良猫が人に会いに来るなんて十分特別なことだったんですよね。いつの間にか当たり前になっていました、私の中では。
でも、周りは特別を理解していたようです。すぐに別の遊びがブームになりました。
最初こそ俯いていた私でしたが、美味しいご飯を食べて、お母さんと一緒に泣いて眠れば、もう大丈夫。その日の夕方から、楽しく遊べます。
そうして、クロのことは、徐々にただの良い思い出として私の中に刻まれようとしていました
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