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エピソード4
でも、クロはもう一度だけ、私の前に姿を現しました。
皆がクロのことなんてすっかり忘れた六年生の頃、友人と久しぶりに訪れたあの神社で、一匹の黒猫に出会いました。
直感で分かりました。あれはクロだと。
細くとがった瞳でも、がらがらの鳴声でも、力なくしおれているしっぽでも、ぼてっと太ったお腹でも、あれはクロでした。
一瞬で、小学二年生になった私は、友人を置いて、すぐさまクロの下へ駆け寄りました。姿かたちが変わっても、そのときの私にとってクロはクロ、永久不滅のアイドルだったのです。
そのときのクロにとって、私はただの人間でしたが。
駆け寄ってきた私に対して、クロは、そっぽを向いたかと思うと、パッとその場を離れ、茂みの中に隠れてしまいました。
私は必死で探しました。茂みで服が破けようが、皮膚が擦り切れようが、探し続けました。何かの間違いだと信じたくて、信じ込みたくて。
でも、結局、クロを見つける前に、友人に無理やり連れて帰られました。その時、あたりはもう真っ暗になっていました。
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