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エピソード5
私は、かなり落ち込みました。それ以上に悔やみました。
クロは、私たちを、来る日も来る日も待っていたのかもしれない。「明日こそは、皆、笑いながらあの神社にいるかもしれない、明後日なら来るかもしれない。」そう思いながら、私たちを待っていたのかもしれない。
これは、罰だ。私が先にクロを裏切ったから、クロが私を忘れたのだ。
当時の私は、本当にそんな風に考えていました。笑っちゃいますよね。小学生ですから、もっと残酷なことを知らなかったのです。
でも、大人になるにつれ、理解しました。
別れることが最初から決まっている出会いがあるってことを。
小学生の頃の私には信じられなかったと思います。嫌われた先に別れがあるだけじゃなくて、好きのままでも、会えなくなることがあるなんて。
けど、当たり前のことなんですよね。
この世に生きる限り、どうしても離ればなれになるときがあって、私とクロの場合は、それが夏休みの終わりの日だっただけ。そして、その果てに忘れ去られただけ、それだけのことでした。
そんなことにいつの間にか気づいて、そして、いつの間にか、私の前にクロが現れることはなくなりました。いえ、正確に言えば、私は黒の野良猫をみても、それが、クロかどうかわからなくなっていたのです。
そのことが、なぜかものすごく寂しくて、今でも妙に印象に残っているんです。
だから、猫って聞くと思い出してしまって、クロのことを。そして、この世界は寂しくできているってことを。
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