王女は灼熱の大地で雪を思い出す

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 カロリーナは第一王女だったが塔に一人で暮らしていた。  母はカロリーナを産んですぐなくなり、父は生きているが、会うことはほとんどない。母の代わりに側室だった人が皇后となり、妹が産まれている。  彼女の世話をするのは、生まれた時からそばにいる侍女のみだった。  その容姿から人前に出るのは固く禁じられていた。時々くる父はカロリーナに繰り返し言った。 「お前の瞳を見ると皆、怖がってしまうんだよ。古い魔法が宿っている瞳だからね。だから、決して外に出てはいけないよ」  カロリーナは父の言葉を信じた。それは、父が彼女を見るときは決して目を合わさなかったのと、触れられたことがなかったからだ。  私の目は魔法がかかっている。  それは、きっと良くないことなんだ。  悲しむカロリーナを慰めてくれるのは、寄り添う侍女と、しんしんと降る雪だけだった。
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