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風呂場から水音が聞こえる。
空は今、部活が終わり帰宅してシャワーを浴びている。
いつも15分は出てこない。
俺は、ダッシュで階段をあがり、自室に入ると制服に着替えてメガネをかけた。
うん。
いつも通り。学校での俺だ。
階段を駆け下り、深呼吸してから玄関ドアを開ける。
「おまたせ」
さっきと違う人物に見せようと、変に声高になった。
怪しまれないようにしなきゃ。
近づくとボロが出そうな気がして、数段高いポーチの上から彼女に話しかける。
「久しぶり。何?どうしたの?」
「あの……」
俺の言動を気にすることなく、忙しなく視線を動かしながら彼女が言う。
「あぁ、ダメ。恥ずかしくて言えない」
どうやら、周囲に気を配る余裕はないらしい。
彼女を見ていると、不思議と俺のほうが落ち着いてきた。
「何、何?」
階段に足を踏み出し、彼女と同じ高さまで降りる。
彼女は赤い紙袋を差し出しがら、勢いよく言う。
「あのね、私。……あの!空くんにこれを渡したくて!!」
ん?
……空?
………空に?
…………俺じゃなくて?
「さっき会ったんだけど、顔見たら恥ずかしくて渡せなかった〜。海くん渡してくださいっ」
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