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再びドアの中に消えた海くん。
ちゃんと渡せるかな……
ドキドキはMAX。
心臓が口から出そうになって慌てて唾を飲み込む。
ドアがゆっくり開く……
??ん??
なぜかまた
海くんが最初の格好に着替えて出てきた。
サッカーのユニフォームでメガネなしの姿。
こうやって見るとやっぱり兄弟だから似てるんだね。
「ごめん……」
と優しい声で海くんが言う。
「プレゼント嬉しいけど受け取れないんだ」
!!
「俺、彼女がいて……だから……その……とにかくごめん」
あ、そういうことか。
海くんは今、空くんのフリをしてる。
そして、私のプレゼントは受け取り拒否されてる。
空くんは、出てきてもくれなかった……。
まさか、海くんが嘘をついてるのかな。
どちらにしても、もうおしまいだわ……。
「受け取れないけど、ガッカリしないで欲しいって言うか、できれば花ちゃんには笑顔でいて欲しいって言うか、あれ?俺なんか恥ずかしいこと言ってるかな……」
ゆったりした低音ボイスを聞いていると、
ポロリと無意識の涙がこぼれた。
海くんの慌てたような顔が滲む。
「わ、ごめん。悪かった。ああ、どうしよう……」
「違うの……」
ティッシュを取りに行こうとした海くんの背中に向かって呟く。
「私のこと、覚えててくれたんだと思って。同じ高校で再会してからあんまり話したことなかったから。だから。ちょっと驚いたというか、嬉しくて……」
「そりゃあ覚えてるよ。保育園のサッカークラブで一緒だっただろ」
「うん」
「よくコンビニごっこした」
「コンビニごっこ……? 」
「ほら、バケツを買い物かごの代わりにして、さ」
「あれコンビニだったの?」
「え?違ったっけ?」
泣き笑いの顔になった。
「ありがとう。海くんにもそう伝えてね」
赤い紙袋を握り直して、無理やり笑顔を作ってそう告げる。
多分、私、今ブサイクな顔してる。
サヨナラ、私の初恋。
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