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宇佐美家を後にしながら、悲しいのになぜかちょっぴり嬉しい、不思議な感情を持て余す。
海くん、私のことよく覚えててくれた。
私うーちゃんの事しか覚えてなかったのに。
海くんとは、ほとんど話さなかったもんな。
双子だった事も、さっき海くんに会ってようやく思い出したくらい。
あ、でもサッカークラブで初めて会ったときは覚えてるかも。
二人のサッカーボールにそれぞれ名前が書いてあったんだ。
他の子たちはマークをつけるか、名前を書くにしても平仮名で書くことが多いのに、二人の名前は漢字で書いてあって。
カッコいいなって羨ましかった。
『花、この漢字知ってる。こっちは“そら”でしょ、で、こっちは、“うみ”でしょ』
『ちがうよ、そらは合ってるけど、にぃちゃんは“かい”だよ』
『ううん、まちがってないよ。この漢字、“うみ”って読むんだよ。ぼくは“うみ”だよー』
『へぇーそうなんだ……!』
『じゃあ。“そーちゃん”と“うーちゃん”だね!』
何か重要なことを思い出した気がする。
でもそれが何なのかわからない。
トボトボ歩いて角を曲がろうとした時、背後から大声が聞こえた。
「花!待って!!俺、謝らなきゃいけないことが……騙すつもりはなかったんだけど……!!」
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