全てを……

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全てを……

気恥ずかしいのか、布団を頭からかぶった男は、ベッドの中、布団との隙間からリンデルが服を脱ぐ姿を見ていた。 ぐいと服を捲るしなやかで強靭な腕。 そう太くは見えないくせに、以前自分をひょいと抱えたことがある、思うよりもずっと力強い腕だ。 無駄のない引き締まった筋肉が、動く度交互に隆起する様が、なぜかとても美しく思えて、男は胸が苦しくなる。 リンデルは服を全て脱ぐと「寒い寒い」と唱えながら、男の布団に潜り込んだ。 「上だけは着といた方がいいんじゃないか?」 男が風邪でも引かないかと心配するが、青年は「大丈夫だよ」と笑って答えた。 ごめん、俺ちょっと手が冷たいんだけど……と前置きをして、リンデルが男に尋ねる。 「触ってもいい?」 何を今更、と苦笑しながら、男は「ああ」と答えた。 ひやりとした手に胸を撫でられて、男が思わず身を震わせる。 それを誤魔化すように、男は口を開いた。 「っ……けどお前、まさか、俺が初めてなんじゃないだろうな?」 この青年とは十七年も離れていた。 勇者になってからは恋愛がご法度だったしても、その前に彼女のひとりやふたり、いたっておかしくは無いだろう。 リンデルは美形というわけではないが、それなりに整ってはいる。 優しげで清潔感もあるし、実際すこぶる優しい。 笑顔だって可愛らしい。まるで天使だ。 言い寄ってくる女性がいない方がおかしいんじゃないか? カースが、脳内で偏った評を繰り広げているうちに、リンデルは苦笑を浮かべて答えた。 「ええと……ごめん。初めてではないんだけど……」 「いや、謝ることじゃない。……むしろ安心した」 笑って応えるカースに、リンデルはさらに複雑そうな顔を見せる。 「その、俺……前に一度、媚薬を盛られたことが、あって……」 「!?」 「その時に、ロッソが……その、助けて、くれ、て……」 バツが悪そうに俯くリンデルの顔が見る間に赤くなる。 「……あの従者と……!?」 カースは気付いていた。あの従者がリンデルをことさら特別に思っていることに。 (てっきり報われてねぇのかと思ってたが、やる事はやってんじゃねーか) 知らず口元に苦笑が浮かび、男は自分があの従者に気付かぬうちに肩入れしていたことを知る。 (ま。だからと言って、譲ってやる気はないが……) 「ごめんっ! 俺……っ。カースのこと、裏切るつもりじゃなーー」 ガバッと顔を上げて謝るリンデルの唇を、男が優しく塞ぐ。 「ん……っ」 そっと唇を離されて、リンデルがほんの少し淋しげな顔をする。 その顔を愛しく思いながら、男が諭す。 「謝ることじゃないって、言ったろ?  大体お前は、俺のことを覚えてなかったんだ。立てる操も……」 「覚えてたよ!」 リンデルが、必死で男を見る。 「どうしても、思い出せなかったけど、心も、体も、俺カースのこと覚えてた。  忘れなかったよ!!」 「……っっ」 男が言葉に詰まった。 喜びと、申し訳なさでいっぱいになった男へ、今度はリンデルが優しく口付ける。 「ね、カース……俺のことだけ、見てて……」 「ああ……」 唇が触れ合うほどの距離で会話を交わして、もう一度口付ける。 互いの息が乱れるまで確かめ合いながら、リンデルは男の胸で温められた指先で、撫でられ立ち上がった胸の突起を優しく弾く。 「……っ」 びくりと男の腰が浮く。 男も負けじと、片手を伸ばして青年のモノを撫でた。 「んっ……ぅ……」 すでに固く熱を持っていた青年のそれを、男は自身のモノと合わせて扱く。 「あっ……、それ、や……っあ」 やはり恥ずかしいのか、桜色だった青年の頬に赤みが増す。 リンデルの身じろぎに合わせて、ぎしり。とベッドが鳴る。 音に反応して、びくんと身を縮めた男に、リンデルは一瞬眉を寄せると、声を上げた。 「カースっ、ベッド、買い替えようっ!」 「え……?」 突然耳元で叫ばれて、カースが動きを止め、荒い息を整えているリンデルを見る。 そして、やっと、それが自分の事だと知る。 「あ…………っっ」 羞恥心に耳まで赤くなる男を優しく撫でながら、リンデルは続ける。 「新しいベッドは、俺が選んでカースに贈るよ。俺からの、プレゼント。  もっとふかふかで、カースが朝までゆっくり寝られるような、そんなやつ」 「……リンデル……」 まだあの男に反応していた自分の不甲斐なさ、恥ずかしさ。 それに気付いていたリンデルは、どれほど辛かっただろうか。 なのにリンデルは、それでもなお、俺を大事にしようとしてくれる……。 こんな、不甲斐ない、呪われた俺を……。 男の瞳がじわりと滲む。 「新しいベッドでさ、俺といっぱい愛し合って、今度からはそのベッドが鳴るたびに、俺を思い出して」 そう言って、青年はふわりと微笑む。 まるで、その日が来るのが楽しみだと言うように。 「ああ……。リンデル……」 思わず伸ばした男の手に、青年は嬉しそうに頬を寄せた。 男は、この温かい青年に、身も心も全てを捧げたいと願った。 財産も名もなく、持てるものは自分だけだったのに、それすら尽くせないなんて、あんまりだ。 あの男の存在は消せないけれど、あの男を憎む気持ちは、青年が涙とともに流してくれたのか、今はほとんど残っていなかった。 この心を、どうか、この青年に埋め尽くしてほしい。 「リンデル……」 男の、掠れた切なげな声。その甘い声に、青年は煽られる。 「カース……」 男が自分を求めてくれている。 青年の愛したその眼差しが、自分へと真っ直ぐに注がれている。 喜びは熱となり、青年のそれを一層固くした。 リンデルは、男の後孔へと指を這わせる。 そこは、滑らかに青年の指を飲み込んだ。 「ん……っ」 僅かに目を細め、それでも男はリンデルから目を逸らさない。 その気持ちが嬉しくて、青年は男に口付けを降らす。 その間にも、一本、もう一本と指は男の中へと入り込む。 「ぅ……、……っ、……ん」 じわりと男が頬を染め、潤んだ瞳でリンデルを見つめる。 縋るような、ねだるような瞳に、リンデルは指を奥まで押し込む。 「ぅぁっ、ん……っ……んんっ」 手前を撫でたり、奥を突いたり、繰り返し指を動かす間、時折男が耐えきれずに嬌声を上げる。 その甘い響きに、リンデルの背をゾクゾクとしたものが次々駆け上がる。 「もう、入れてもいいかな?」 「っ、あ、ああ……」 返事の合間にも、はぁはぁと男が苦しげに息をするのが聞こえる。 熱い息が、上気した肌が、しっとりと汗に濡れた黒髪が、男の潤んだ瞳を飾る。 僅かに開いた口元から溢れそうな雫を、男は舌先でペロリと舐めた。 むせ返りそうなほどの男の色気に、リンデルはめまいがする。 「カース……すごい……、えっちだよ……」 「っ!?」 動揺する男をよそに、リンデルは男の足を割り広げ、自身をそこへと充てがう。 「……俺、我慢できるかなぁ……」 心配そうに呟く青年に男が苦笑を浮かべかけた時、青年が侵入した。 「ぁっ、ぅ、ぁぁっっ!」 青年のそれは、男が思うより何倍も熱く感じられた。 「痛い? 大丈夫?」 「いや、だいじょ……ぶ、だ……」 真っ赤な顔をして答える男の口端から、一筋溢れた雫が銀の糸を引く。 「ああ……カースのナカ、とってもあったかいね……。すごく、気持ちいい……」 苦しげな息を整えさせてやりたいと思う頭とは裏腹に、青年の腰が揺れてしまう。 「ぅ、く……、ん……んんっ」 男が、声を堪え切れないのか、自身の手の甲を口元に強く押し付ける。 「声……我慢しなくて、いいのに……っ」 緩やかな動きは止めないままに、青年は口を覆う男の指へと自らの指を絡める。 「っは……、カースの声……もっと、聞かせて……?」 熱い吐息と共に耳元で囁かれ、思わず男の力が緩んだ隙に、青年が握っていた手をぐいと頭上へ運ぶ。 「ぁっ、こら、リン……っんっ、ぅぁ……っ」 男の甘い声に、青年の頭がジンと痺れる。 もっともっと声が聞きたくて、つい腰の動きを早めてしまう。 「ふ、ぁ、……っくぅっ、……んっ、んぅぅ……っ」 必死に唇を噛む男が、そこから滲む血の味に図らずも理性を溶かされる。 「ぁっ、ぁあっ、……く、ぅああんっ」 「カースの、ナカ……、きゅうって、して……っんっ、気持ちい……よ」 青年が、男の上で温かな金色の髪を揺らして囁く。 頬を伝う汗が、顎の先からぽたりと男へ降る。 その雫を額に受けて、とろりと蕩けそうな空色が、熱に浮かされた森の色と共に、うっとりと青年を見上げる。 やけに鮮やかなその瞳に、リンデルはまた魅入られる。 「カース……好きだよ……」 リンデルの腕が、男の脚をぐっと持ち上げる。 「ぁあああっ」 一際深く突かれて、男が鳴いた。 「んっ、カース……」 青年は、息苦しいほどの愛しさに任せ、男の奥へ深くへと繰り返し侵入する。 「ぅ、あ……っぁあっ。あ……っ、んんんっ」 男は受け止めきれないほどの快楽に、恍惚とした表情に涙を浮かべて、それを必死で受け入れている。 「あっ、ぅ、カース……俺、も……イキそ……っ」 男が、それに視線で応える。 熱い瞳に求められ、リンデルの熱が高まる。 「ナカ、に出しても、い……?」 こくりと頷かれ、どくんと青年のものが脈を打つ。 一回り大きく膨らんだそれに、男の内側が無理矢理押し広げられる。 男は耐えきれず、ビクビクと痙攣を始めた。 「ぅ、ぁあ……ぁ、んっぁぁぁんんっっ!!!」 ぎゅっと目を閉じ、背を丸めて息を詰める男。 男のものからとろりと液体が漏れる。 リンデルも、男の内で強く優しく締め上げられて、嬌声を漏らしながら激しく突き上げる。 「ああああっ、カースの、あっ、ナカ……っイイっ……んっ、俺、出ちゃ……ああっっ、出ちゃう、よ……っっ」 「んんんんんんんっっっ!!」 ガクガクと揺すられていた男が目を見開き、びくりと大きく跳ねる。 「ん、イ、クっ、は、ぁっあああぁぁっっんんん!!」 青年は、最後に力強く奥まで突き入れると、男の中へ全てを吐き出す。 男の内を、その全てを、自分の色に染めたいと願いながら。 「くぅ、ぅ……っ」 必死で歯を食いしばって堪えていた男が、下腹部へ広がる激しい熱に浮かされ口端をじわりと緩ませる。 そこから一筋零れた悦びの雫が、使い込まれたシーツにぽたりと染み込んだ。 「はっ……はぁ……カース、大丈夫?」 リンデルは、肩で息を継ぎながら、体を縮めて蹲る男を覗き込む。 「あ……、ああ……。だい、じょう、ぶ…………だ……」 言葉と裏腹に、男はまだビクビクと痙攣を繰り返している。 「ごめん、俺……最後、もう止まんなくって……。痛くなかった……?」 心配そうに尋ねる青年の、金色の瞳が男を労わるように包み込む。 「だい、じょう……っっんっ」 はあっと熱い息を吐いて、男が目を細める。 滲んだ瞳からぽろりと涙が溢れたのを、青年が慰めるように舐め取った。 男の浅黒い肌は艶やかな朱に染まっている。 肩口で結ばれた髪は乱れ、解けた黒髪が汗の滲んだ顔や首元に張り付いている。 男の色気に、青年はごくりと喉を鳴らす。 その森と空の瞳が見たくて、青年は男の伏せられた睫毛にそっと口付けた。 「んっ……」 それだけの刺激で、男はびくり、と身を縮める。 男は知らなかった。想い合う者に貫かれる悦びを。 愛しい者に注がれる幸せと、そこからあふれる快感を。 「……まだ、カースの中、きゅうきゅうってなってるね」 青年は男の耳元に唇を寄せ、囁く。 柔らかな金の髪に頬を撫でられて、男が息を詰める。 「っ……」 「……もう一回、する?」 問われて、男が青年を見上げる。 目が合って、金色の瞳が嬉しそうに微笑む。 天使のような笑顔を見せながら、青年は男の中でじわりと熱を取り戻す。 「ぁ……っ」 男がそれに反応してくれたのが嬉しくて、青年はゆるりと腰を揺らした。 「んっ……ぁぁっ……っっ」 溢れた声に、男が慌てて口を覆う。 「ふふふ、カース、とってもえっちな顔してるね」 言われて、耳まで赤くした男が潤んだ瞳で睨む。 そんな姿すら愛しくて、青年は苦笑する。 「ごめんごめん。でも、俺カースのこんな顔が見られて、すごく……嬉しいよ……」 ふわりと微笑んだ青年に、男の棘が緩む。 そこを青年が突き上げる。 「ぅぁっ」 切なげに喘ぐ男を、リンデルは優しく撫でる。 「今度はもっと、いっぱい、してあげられるからね」 その言葉に男は息をのむ。 これ以上快感を与えられたら、頭がどうにかなってしまいそうだ。 「や……っリンデルっんっ、もう、い……っ、ああっ!」 「大丈夫だよ。夜明けまでは、まだまだあるからね」 男の心を知ってか知らずか、青年は答えると同時に緩く出し入れしていた腰を奥深くへ差し入れた。 「んっ、ぅんんんっ!」 ビクビクッと男の腰が跳ねる。 男の中がまた強く締まり、青年の口端に笑みが浮かぶ。 「また、イっちゃった……?」 優しく囁かれ、男は滲んだ瞳で見上げる。 「ぅ……っ、もう、やめ…………っあっ」 「ん? カース疲れちゃった? 俺動くから、大丈夫だよ」 笑顔で告げて、リンデルは男の中を優しくかき混ぜる。 「んんっ、ん……っ、ふぅ……っぅ……」 ジンジンと頭が芯から溶けてしまいそうで、カースは口を押さえたまま涙を零す。 「カース……好きだよ……大好き……」 囁かれて、男が涙に濡れた瞳を上げる。 ちゅ。と音を立てて、リンデルは男の涙を吸う。 「んっ、ぅ、んんっ」 愛を注がれるほどに、体がより深く快感を得てしまう。 愛されていることそのものが、感受性を高めているのか、優しくされればされるほどに、男は追い詰められていた。 「んんんっっ、んんっ、ぁぁんんっ」 甘い声でよがる男が愛しくて、リンデルは、男へと長い指を伸ばすと、男の肌に張り付いた黒髪を優しく梳かす。 「気持ちいい……? 嬉しいよ……。俺も、カースのナカ……、気持ちいい、よ……」 リンデルの柔らかな声が、熱を孕んで男の耳へ届く。 男は、自分の体で、青年が感じてくれている事が純粋に嬉しかった。 体だけでなく、心まで溶かされて、男は涙を溢して微笑む。 「……リン、デル……」 「カース……」 男がその手を青年へと伸ばす。 差し出された指先に口付けて、青年が掌へ愛しげに頬を寄せる。 男は青年の頭を大事そうに抱き寄せた。 封を解かれた男の口からは、揺さぶられる度に嬌声が繰り返されていたが、その合間を縫うようにして、青年の耳元へと必死の思いで告げる。 「俺を……っあっ、俺、を……全部……っんんっ」 リンデルが、男の言葉を聞こうと動きを止める。 「カース?」 男が、まだ上がったままの息の隙間から、懸命に伝える。 「俺を……全部、お前の、っ物に……っっ」 「うん……ありがとう……俺も全部、カースのものだよ」 その言葉に、カースの瞳が悲しげに揺れる。 「馬鹿……、お前は、……皆の、勇者様、だろ……?」 男は、ほんの少し淋しげに口元だけで笑ったが、青年は花のようにふわりと微笑んだ。 「だけど、勇者じゃない時の俺は、全部カースのものだよ」 男がその微笑みに目を奪われる。 この温かい、陽の光のような金色の青年が、その全てを捧げると……。 俺に……この俺に、全てを寄越すと……? 「……リンデル……」 カースが、受け取りきれない贈り物に、狼狽えるように視線を彷徨わせる。 そんな姿もまたいじらしくて、リンデルは男を抱きしめる。 「ふふ、カース、大好きっ」 抱かれた拍子にグッと奥を突かれて、男が声を漏らす。 「ぁんんっ!」 「もっともっと、俺ので気持ち良くなってね」 「ちょ、ま、リンデ……」 青年は無邪気に微笑むと男の内側を擦る。 「ふ、ぅ、ぁぁっ」 思わず目を瞑った男から零れた涙を、青年がぺろりと舐める。 「ん、これ、い、じょ……っっんんんっ!」 深く、浅く、ぐりぐりと掻き回すと、男のナカがまた熱くなる。 それに呼応するように、リンデルの息も荒くなってくる。 「ぅ、ふぅ、……っっくっ」 男は残念ながらまた手の甲で口元を押さえてしまったが、そこから漏れ出す声もまた、カースらしくて色っぽいとリンデルは思う。 「あっ、だ……っ、また……っ、ぅぁぁっ」 男の眉が切なげに寄せられる。 「んっんんんんんんんんんっっっ!!」 男の内側が、まるでリンデルの全てを吸い込むかのように蠢く。 「っ、はあっ、カース……気持ちい……よ……っっ」 頬を鮮やかに染めた青年は、ガクガクと震える男の両脚を両手でぐいと持ち上げると、男の中へ、さらに深く侵入する。 「ああっ、も、これいじょ……した、ら……あぁぁっっ」 まだぎゅうぎゅうと絡み付いてくるナカを、青年は更に突く。 男はポロポロと涙をこぼしていたが、その声は甘く蕩けるようだ。 「っ、ごめ、ん……っ。長過ぎ、た? 今、イク……ね……っ」 青年は一言謝罪すると、その終わりを告げる。 そして、一気に奥を突き上げる。 「ぁああああぁぁぁぁあっっっ!!」 男の長い声に、青年が煽られる。 男の内側は、何度も何度も青年を優しく締め付けてくる。 「ああ、とっても……っいい、気持ち……ん、あっ、あぁっ」 「くっ、ぅ、んんんっ」 熱い吐息を耳元にかけられて、男がまたその肩を震わせる。 激しく腰を打ち付けながら、リンデルが背をかがめて囁く。 「イクよ……っ」 耳に届いた言葉に、男の体がまるでそれを期待するかのようにカッと熱くなる。 自身の体がそれを待ち望んでいることに男は戸惑うも、次の瞬間、あまりの快楽に何も考えられなくなってしまう。 「あっ、ああっぁぁああああああああああっっっっんんんっっっ」 どくりと大きく膨らんだ青年のそれに中を擦り上げられ、ゾクゾクと絶え間なく立ち上る快感に、声が止まらない。 続いて、青年も最奥を勢いよく突き、声を上げ達した。 「っあああああっっっ!!」 体内へと勢いよく吐き出される熱い熱い青年の精に、男が翻弄される。 チカチカと輝く星が目の前に飛び散り、視界は白く染まってゆくも、その中で快感だけが鮮明に男へと降り注ぐ。 「んんんんぁぁぁぁあぁぁぁぁぁんんんんっっっ!!」 男は、ビクビクビクンッと一際派手に痙攣して、それきり静かになった。 青年は、男が意識を飛ばしてしまったことを知り、肩で息をしつつ男の頬へそっと口付ける。 「ぅ……、ん……」 男は、意識を失ってもなお、まだ深い快感の渦に捉えられていた。 「……やりすぎちゃったかな……。ごめんね、カース……」 青年は申し訳なさそうに、けれどどこか嬉しそうに呟くと、未だ小さく痙攣を続けている男を優しく撫でる。 「夜明けまでに、起きてくれるかな……」
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