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「あ? さっきのメガネじゃねぇか」 「ひ……っ」  やっぱり殺し屋だ。眼光がすごい。怯んだ俺の後ろから、担任教師が顔を出した。 「五十里(いがり)、転入生にガンつけんな」 「は? してねぇすよ」 「お前は地顔が怖いんだよ、笑って迎えてやれ」  その言葉に、彼が数秒、真顔になる。それから片頬を引き攣らせ唇を歪ませた五十里君に、担任はブハッと吹き出した。 「笑顔ヘッタクソ!」 「はぁ!?」  笑われてこっちを睨む顔は、ほぼシベリアンハスキー。彼は不満丸出しで腕組みをして、椅子の背にもたれた。 「伊藤君、出席番号2番だから。席はそこ、五十里の後ろな。まず座って」 「……はい」  なるほど、殺し屋の背後にまわれ、と。  とはいえ、ヘッタクソな笑顔で迎えようとしてくれたし、先生にいじられてるし、怖い人じゃないのかもしれない。指示された席におそるおそる座った俺は、五十里君を後ろから観察した。  黒髪短髪、制服は普通に着てて、特に派手さはない。が、机の横にかけた鞄、あの中にはおそらく、さっきのハンドガンが入っているのだ。  背中を冷や汗が流れた俺に、黒板の前に立った担任が顔を向けた。 「新年度恒例の、自己紹介始めるぞ。まず、ドキドキワクワクの転入生から。伊藤君、起立!」 「はい! 親の転勤で引っ越してきました、伊藤雪知(ゆきち)です。家族は両親と柴犬。よろしくお願いします!」  住んでたとこ、超絶田舎だから言いたくない。  趣味と特技、漫画だけど絶対オタクだと思われるから言いたくない。  緊張しつつ無難な自己紹介をして着席した俺と入れ替わりに、広い背中が立ち上がった。
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