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「五十里直虎、17歳。好きな動物は……飼ってないけど豚かな、美味いから」
いやそれ「好き」の種類違うやつだろ。てゆうか別に自己紹介で好きな動物とか求められてないだろ。
そう思ったのに、後に続く自己紹介が「好きな動物大喜利」みたいになっていく。
「パンダ先輩推しです!」
「め、女豹のポーズ……好きです(ぽっ)」
「最近アツイのはバナナナメクジですかね。いつか擬人化して薄い本出したいと思ってます」
なんだろう、東京って変なやつ多い? 引き気味の俺に構わず最初の学活は終わり、チャイムが鳴り終わるなり五十里君が振り向いた。
「おい、メガネ」
「ひっ!?」
「鼻かめよ、ちり紙ねぇのか?」
「え……?」
「しょうがねぇなあ」
五十里君が腕を伸ばして、脇の鞄を開ける。息を呑んだ俺に差し出されたのは、かわいい動物のキャラクターが描かれたポケットティッシュだった。
「さっきからズルズルしてただろ」
「あ……ありがとう」
ティッシュなら、本当は持ってる。けど、俺は素直にそれをもらって鼻をかんだ。
「花粉症か? ちゃんと薬飲んどけよ、脳みそ無くなっちまうぞ」
「え? なんて?」
「知らねぇのかよ、鼻水ってのはなぁ、脳みそが溶けてちょっとずつ出てきてんだ。あんま鼻垂らしてっとバカになっちまうから、気をつけろよ」
「五十里君……」
花の都大東京にも、こんなバ……純粋な子がいるんだなって、俺の胸に花が咲いた。五十里くんが女子だったら、恋に花が咲いたかもしれない。
でもあいにく俺は花粉が大嫌いだし、BL世界の住人ではないので、「ギャップ萌え〜」と思うにとどめた。
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