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 俺は五十里君と二人、公園のベンチに並んで座っている。ナルちゃんが通う保育園の近くにある、こぢんまりした児童公園だ。 「オレが高校卒業するまではさ、ナルは(ヨメ)の実家で面倒見てもらうことになってんだ。嫁も両親(おや)も自営で働いてっから、保育園の送り迎えはオレの担当でさ」  目の前の砂場では、さっき五十里君が引き取ったばかりのナルちゃんが、砂をプリンカップに詰めている。 「ナルちゃんて、今何歳?」 「2歳と……3ヶ月だな」  五十里君は小学生みたいに、指を折って答えた。  ということは。この子が生まれたのは、俺たちがまだ中3の時だ。そりゃあ、子どもがいたらダメなんて校則は、高校にはないと思うけど。 「五十里君の彼女は?」 「彼女?」 「あ、えっと……ナルちゃんのお母さんは」 「ああ、ナツミ? こないだ22になった」 「ナツミさんって言うんだ」 「そう、嫁、ナツミ。籍、まだだけど」  五十里君にとって、ナツミさんは「彼女」じゃなく、もう「嫁」なんだな。愛想笑いが下手な彼が浮かべる柔らかな笑みが、じんわり沁みる。 「なれそめとか、聞いていい?」 「なに染め?」 「いや、だから、ナツミさんと知り合ったきっかけとか、そういうのを」 「ああ」  ナルちゃんがカップに詰めた砂は、ひっくり返すときれいなプリン形になった。少し掘って湿った砂を使っているところを見ても、手慣れた感じがする。  やるなあ、と思いつつ見ていると、五十里君があまずっぱい思い出を語り始めた。
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