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校章の話らしい。「ワッペン」というネズミに似た架空のキャラクターが鼻先で恋人とキスする謎映像は、俺の頭から消えた。
「ナツミもさ、殴られなかったーっ、マジ妊婦でよかったーって笑ってた」
「ファンキーな妊婦さんだなぁ」
それにしても、20歳のときに中学生の五十里君と付き合って出産し、俳句と座禅が趣味で、2歳の子に玩具の銃を買い与えるナツミさんは、一体どんな人なんだろう。
「ナツミさんて、見た目もファンキーな感じ?」
人物像が想像できずに聞いてみると、空を見上げたり首を傾げたりして、熟考した五十里君が呟いたのは。
「とりあえず、髪は虹色」
「に……っ!?」
相変わらず、斜め上の回答だった。
「ネコちゃー!」
甲高い声に顔を向ければ、ナルちゃんがパタパタと出口へ走っていく。どうやら、通りすがりの猫を追いかけたいらしい。
「おい、待てよ! あ、オレこのままナル送ってくから、じゃあな!」
五十里君は素早く学生鞄を掴んで、大股で子どもを追いかけていった。
彼ら父子が去った後の公園は、なんだか急に寂しい感じになって。ふと視線を落とすと、俺の隣にはナルちゃんのハンドガンが残されていた。
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