おばけの家

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おばけの家

僕は塾へ行った。 一人で家の中にいるのは怖かったからだ。 (塾から帰ったら、お母さんが晩ごはんを作ってくれている) そんな妄想は打ち砕かれた。 電気のついていない家は、なんだかおばけに乗っ取られてしまったように静かで暗かった。 中に入れず玄関ポーチで一時間くらい座っていると、お父さんが帰ってきた。 「お父さん!」 顔を上げたお父さんが、知らない人みたいな気がして一瞬ドキッとした。 「ああ、隆……か」 お父さんは疲れ切った声でそう言うと、真っ暗な家の鍵を開けた。 中からおばけが飛び出してきそうで、僕はお父さんのスーツの端っこを握りしめて黙って立っていた。
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