母不在

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母不在

パチンとスイッチを入れれば電気がついた。 僕はひとまずホッとする。 けれどそこにお母さんはいない。 晩御飯ももちろんできていない。 床にばらまかれたカップの破片も片付いてなどいなかった。 お父さんは小さく舌打ちをした。 僕の体がビクッと反応する。 「外で食ってくるか……」 お父さんは僕を連れて牛丼屋に入った。 お父さんは何も喋らない。 僕も何も聞けない。 黙って黙々と食べる牛丼はあまり美味しくはなかった。
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