身勝手な父親

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身勝手な父親

高速道路を使ってやってきたのは、群馬のおばあちゃん家だった。 僕を縁側で待たせて、お父さんは中に入っていった。 古い家は開放的でどこもかしこも開け放たれている。 お父さんとおばあちゃんの声が筒抜けに聞こえてきた。 「なんだって離婚届なんて渡したんだい、堪え性(こらえしょう)のねぇ……」 「済んだことはしょうがないだろ?」 「美智子さんも思い切ったことをしたもんだぃね。隆だって()るのに」 「だから頼むよ、母さん。仕事しながら子供の面倒見るなんて無理なんだ」 「無理っておめぇ、隆の学校はどうするつもりだい?」 「手続きはするから、こっちの学校に通わせてくれよ」   僕は良くわからないまま、お父さんとおばあちゃんが激しく言い合う声を聞いていた。
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