置いてけぼり

1/1
前へ
/33ページ
次へ

置いてけぼり

要するにぼくとお父さんを捨ててお母さんは出ていった。 そしてお父さんは僕を、このおばあちゃん家に捨てていこうとしている。 僕の世界が突然、テレビの画面を消すようにプツンと音もなく消えた。 「要るものは後で送るから!」 「ちっとまちやっせ、聡一(そういち)!」 逃げるように車に乗り込み去っていくお父さんは、僕のことをちらりとも見やしなかった。 縁側で立ち尽くす僕に、おばあちゃんは小さく首を振って言った。 「疲れたろうね。中にお入り」
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加