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いや、男しかいないから、父とか母とかの呼び方がないのは何となく理解できる。けどな?子どもは呼ぶだろ?パパ、ママってな?
ここではパパは『ディ』、ママは『デォ』と呼ぶ。日本語に直訳すると『仕込んだ人』『産んだ人』。
近所の子どもが「クウンディ」と言えば日本語で『クウを仕込んだ人』になる。
直訳すんな、なんて言ってくれるな。ガキの頃にここの国の言葉を理解するのに直訳すんのが手っ取り早いと、そうするクセがついてしまったんだ。これはもう、習性と思ってもらいたい。
まぁそれもこの国で育った異世界人の俺からすれば普通の事だし仕方ないと思う。
ただ、魔王討伐依頼の時に王宮には平民は入れないから、とファミリーネームを賜った。その名も「ヒートゥ」。つまり俺は『ヒートゥ・クウ』となった。
んでもってサクサクッと魔王討伐して断ることもできずに爵位「ゴォ」を賜り『ヒートゥ・ゴォ・クウ』を名乗ることになった。
そして、ここからが問題だ。
国王様のご好意?かなんかで王族の末席を賜る事になったんだが断りたい。断りたいが「いらん!」と突っぱねることができない。なぜなら相手は国王様だから。
末席に加わると色々優遇させる。王都に邸宅がもらえるし執事やメイドといった、もうこれこそファンタジーじゃん的なものまでついてくる。それだけじゃない。領地が手に入るのだ。領地をもらえることができたなら領民に読み書き計算を教える事ができる。識字率を上げればそれだけ領民の生活が豊かになる。
日本人だからな、俺。子どもは子どもらしく学校行って勉強して遊んで欲しい。俺のように人手が足りないからと毎日のように畑に駆り出されるなんて、ダメだろう?
だから悩むんだ。平民の生活も気になるが王族の末席であれ、そこに名前を連ねるとなれば、王族の証のミドルネームがつく。この国の王族のミドルネームは『ミン』だ。
いいか?仮に、仮にだ。俺が王族になったとしよう。
討伐前に賜った『ヒートゥ』それから討伐完了の証の爵位としての『ゴォ』、元々の名前の『クウ』。そこに『ミン』が加わってみろ。並べて読むと『ヒートゥ・ミン・ゴォ・クウ』だぞ?直訳すれば『王族のヒートゥ公爵家のクウ』だが、字面を見ろ。『ヒトミゴクウ』だぞ?人身御供・・・誰に召し上げられるんだよ。
王族か?国か?それとも領民か?人身御供にはなりたくないぃぃぃい。
だから俺は意を決して見合いをすることにしたんだ。だってこのままじゃ人身御供になってしまう。そんなの嫌だわ!
という事でただ今見合い中なんだが。
そう、これが俺の相談したいことだ。目下の悩みだ。
俺のために集まった男は5人。さすがに王族はいない。当たり前だ。王族になりたくないための見合いなんだから。子爵と男爵、冒険者に行商人とそれから商人。
誰でもいい、早く身を固めたいと申し出たところ、この国の宰相だか宰相補佐だかが集めた人たちだ。つまりは俺にくるめられて集まってきた人たち。
もうこの時点で候補は4人である。何故ならば俺が貰った爵位は男爵だからだ。
ちなみに子爵のミドルネームは『バン』。
ファミリーネームがあるって事はそれなりに裕福な人たちになる。平民と奴隷にはファミリーネームはないからな。
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