【第一話】異常者の君、健常者の僕。

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 次の授業は、確か社会だ。前、【次の授業は臨時的だが今の日本がどうやって作られたかをやるぞ】と言っていたから、今日はそれだろう。  異常者の増加に伴い、またをやろうというのだろうか。しかしニュースでは【歴史の授業の改定をするため】と報じていた。 「…私は、日本の歴史の授業って意味ないと思うの。無駄だと思うわ。私のような人(異常者)が増えるだけ。」 「………」 「けれどね、今はほとんどの人が洗脳状態にあるのよ。だからこそ、日本はこの政治を続けていく事ができる。」  キサラギさんは空を見上げる。その瞳はどこかせつなくて、哀しそうで、それでいて力強い意思を持っていた。  日本で【日本人は洗脳されている】などと言ったらまず異常者扱いされること、異常者施設送りにされることは間違いない。  このご時世、どこに録音テープやカメラがあるのかも分からない。  それでもこの現実を受け止めながらも、自分の意見を貫くキサラギさんは、間違いなくかっこよかった。 「僕も、異常者の世界を見てみたい…。一緒に行くのは駄目ですか?」 「…良いの、キミは。キミには正常者の世界にいてほしい、頑張ってほしい。そして、もし私の事で世界が変わったら、教えてほしい。」 「でも…っ…!」 「キミには使命がある。正常者の世界で、生きていてほしい、生き抜いてほしい。この幾千の星の中で、キミには普通に生きていてほしいから。」  僕はうつむく他なかった。キサラギさんは微笑んでいたけど。僕は、強くなりたいと心の底から願った。  僕は、この世界の、キサラギさんになりたい。 「ねぇ、知ってる?異常者との面会も出来るんだよ。」 「…え?」 「わざわざ行こうという人はいない。けれど、いける。会えるんだよ。そこは何故か監視対象外なんだよ。私は異常者になる前に行ってみたい。」 「…………」 「家族からは、猛反対を受けた。けれど、私は行く。どうせ異常者になるんだから、自由なうちに行っておかないと!」  そう言ってキサラギさんは弁当をしまって歩きだす。さっさと去ってしまうキサラギさんを、僕は必死に追いかけた。
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