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「…サクラギさん、今日お昼一緒に食べない?」
「え、でも…」
「行ってこいよ、キサラギとお昼食べるなんて滅多にないことだぜ。…このチャンス逃すなよ」
そうトモダチに冷やかされながら、僕とキサラギさんは屋上に向かう。
ここの学校の屋上は、ずっと立入禁止だったけれど、誰かが抗議して開放されたと聞いた。
自殺防止、と学校は言ったそうだが、それはそうした先生方の責任だと正論をぶっ放したそうだ。
僕は、今はそれはキサラギさんではないかと思い始めている。
「ごめんね、急にお昼一緒にだなんて言い出して。話したいことがあって。」
「…こんな僕に話してもいいんですか?」
「サクラギくんじゃないと駄目なの、信用の面でもね」
「はぁ…?」
「いずれ分かる」
僕はお弁当を取り出す。それに対してキサラギさんは購買で買ったパン一つだけだ。
「…キサラギさん、購買で買うんですね、意外です」
「言っちゃ悪いけど、家では高級なものしか出ないのよ。私は、こういうのが本当は食べたいの。…ちゃんと心のこもった食事が。名門なのに、購買とかがあるの、好きなのよね」
悲しそうにキサラギさんは言った。僕はそれ以上詮索しないほうが良い気がして口を紡ぐ。
辺りに一時の沈黙が流れた。
「…サクラギくんは、異常者ってどう思う?」
「え?僕らとは異次元の世界って感じですかね…?」
「そうよね、そうかもしれない。けれど、私はこう思う。【勝手に差別された人たちの収容所】じゃないかって。」
キサラギさんが、外を見つめながら言った。
「差別され、偏見に巻き込まれた人たちが、収容されるの。…私もいずれ、向こうに行く。触れてはいけない所に触れてしまったから。」
「なんで?悪いこと、してない…」
「そういうもの。今の世の中はそういうものなのよ。だから、私はここが大っきらい。渦に巻き込まれるのは、もう嫌。なら、私はもう異常者として生きていく。」
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