【第一話】異常者の君、健常者の僕。

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 【異常者になる】―――  やっぱり、僕とキサラギさんは違うのかもしれない。健常者で幸せに暮らしたい僕と、異常者を望むキサラギさん。  価値観は違うけど、【】は一緒だなと思った。これが流される僕と、自らが杭のように突き刺さっているキサラギさん。  何故かキサラギさんの方がかっこいいと思えてしまう。 「僕も、このセカイは嫌いです。異常者、なんて他の国には無いじゃないですか…。それどころか、世界では【セクシュアルマイノリティー】という性別に関する関心も深まってきている。」 「そう…だけど、私も怖い。異常者になったら、働けない。家族からは勘当されると思うわ。だから、一度入ったら死ぬしかない。」 「…確かにそうだけど。そこまでして異常者になる必要ありますか?」 「うん。異常者の世界を知ってみたい。世の中の異常者と呼ばれる人たちがどのような考えを持っているのかを聞きたい。」  異常者の世界。と、セクシュアルマイノリティー。日本でそういった言葉が聞かれないのは100%隔離生活を送っているからだ。 「…キサラギさん、僕どうすればいいですか?」 「キミには未来がある。だから死ぬ必要は私はないと思うよ。けれどキミが死にたいなら死ねばいい。」  死ねばいい、という言葉がすんなり頭の中に溶け込んでいく。そっか、死ねばいいんだと僕は思った。  この辛い世界から逃れるために一番手っ取り早いのは、それなんだ。結局は僕らがすぐに変えられるものじゃないんだ。 「…そうだね、日本は今最悪だね。今すぐには変えられないと思うよ。日本は今世界有数の経済大国だからね。」  日本と中国、そしてアメリカは、世界有数の経済大国として世に知られている。  しかし、この世界の日本は、異常者を無償で働かせているから、ある程度安く出来るという仕組みでそうなっている。  今の世界ではこういうことをしないと、ずば抜けて出来るようにはなれない。昔からの習慣も考えて、明治天皇は続けていくと考えたそうだ。
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