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【第一話】異常者の君、健常者の僕。
学年で、異常者が出るかもしれないという噂を聞いたのは、僕が中学生の時だった。
噂されていたのは、凄くお金持ちな美人な女の子で、名をキサラギ マドカと言った。彼女が何故そんな風に囁かれていたのかを、僕は知らない。
けれど、この名門校で異常者が出ようとなれば、それはたちまちニュースの種にされることは目に見えていた。
「…ねぇ、サクラギくんだっけ?教科書見せてくれない?」
「あー…うん、いいよ。」
僕は、そんなキサラギさんの隣の席だった。たしかに少し不思議な言動をする女の子だった。
けれど、テストの成績はとてつもなく良かったし、別に授業の妨害をするわけでも無かったから、別に異常者扱いはされないんじゃないかと思っていた。
だけど―――
「先生。どうしてこの世界は異常者と健常者に分かれているとお思いですか?今、日本は異常者が増えてきており大変政治が危ないと私は思うのですが。だから、この日本のこの仕組を辞めたほうがいいと思うんです。」
この一言がきっかけで、キサラギさんは要注意人物になってしまったんだ。
僕も正直疑問に思っていたことだった。けれど、それを口にだすと、この世界にはいられなくなるから。
両親と離れたくなかったから、僕は、口に出さずに過ごしてきたんだ。
その常識を、堂々をキサラギさんは破ったんだ。真正面から、周りの目を気にせずに。
「キサラギさん、どうしちゃったんだろうなぁ…。あんなこと、異常者としか思えないよ。本当に…なぁ、カイト?」
「…うん、そうだね…」
皆は、なんで疑問に思わないんだろう。けれど、その時の僕は、それを口に出す勇気がなかったんだ―――。
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