1.母性に包まれた記憶

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「待って!!!!」  と、自分の声で我に帰る。  何故か私はベッドの上にいた。おかしい。私はお散歩をしていたはずなのに。 「変な夢を見たわ…」  時計を見ると遅刻寸前。急いで部屋を出て学校へ行く準備をする。 「あ!葵起きたのね!良かった、心配してたのよ。」 「お母さん何で起こしてくれなかったの!?」 「葵の事起こしに行ったけどびくともしなかったのよ。何があって疲れたのかと心配で学校休ませようかと思ったのよ。」  眉毛を八の字にしながらソワソワした様子のお母さん。   確かにあんな変な夢を見たわけだしもしかしたら全然起きなかったのは本当かもしれない。 「お母さん、私なら大丈夫だから心配しないで!とりあえず行ってきます!」 「事故には気をつけるのよ!」  我ながら良い母を持ったと思っている。  我が家は実はお父さんが居なく、ずっとお母さんと二人で生きてきた。  お母さんは常に私のことを考えて愛情たっぷり育ててくれた。  周りは親をうざいだとか言うけど、私は反抗期らしい反抗期もすることもなく今、高校2年生まで元気に育ててくれたお母さんに感謝しかないくらい。  そんなお母さんを苦労させたくなくて、本当は高校出てすぐ働こうと考えたけど、「大学にだけは行きなさい」と物凄く怒られた。  多分、お母さんは大学を出ていないから娘にくらいは…と思ってくれているのだろう。それでもやっぱりお母さんの手を煩わせたくない私は人並みに勉強もして、あまり学費のかからない大学を目指していた。
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