1.母性に包まれた記憶

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「おい、こんなやつなんで産んだんだよ!」 「知らないわよ!あんたのせいでもあるでしょ!」  私よりずいぶん大きな人が喧嘩をし始めた。しかも殴り合いの喧嘩。怖くて私は泣き出してしまった。 「うるせぇ!泣くな!クソガキ!」  蹴り飛ばされた瞬間に気づいた。私はいつの間にか赤ちゃんになっている。  頭の中で言いたいことはあっても、言葉にできない。どういうこと。 「黙れ!本当に私から産まれた子なのかい!?」  女の人らしき人にも殴られる。痛い。痛い…  そしてその顔を見ると… 「お母さん…?」 「いや、俺はお前のお母さんじゃないぞ…」  気がつくとそこは教室だった。  周りからくすくすと笑い声が聞こえるが恥ずかしいよりも状況が理解できない自分がいる。 「大丈夫か、藤沢。お前が授業中寝るなんて珍しい。」 「え、寝てたんですか…すみません。そんなつもりなく…」 「体調悪いのか?そういえば今日朝方、藤沢のお母さんから電話があって娘が体調悪いかもって言ってたな…大丈夫なのか?」 「本当に大丈夫です!すみません!」  その後は急激な眠気に襲われることはなく授業にも全部出ることができた。  もやもやが胸の中に残りつつも。
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