1.母性に包まれた記憶

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「葵が授業中眠るなんで珍しかったわね」 「うん、そもそもいつのまにか寝てたというか…寝るつもりはなかったというか…」 「わかる!私はそんな感じでいつも寝ちゃう!葵もついに真面目ちゃん転落かな!?」 「からかわないでよ美希!もう、勉強教えてあげないよ!」  顔が百面相のように変わる美希と他愛もない会話をしながら帰宅する。  いつも通りの日常。いつも通りのお母さんの愛に溢れる笑顔。あんな夢、忘れるべきだ。  そう思い布団に入る。  すると、また同じ夢を見た。喧嘩する若い男女、私はやっぱりまた赤ちゃんで二人の喧嘩を見ている。  顔ははっきり見えない。ただただ怖い。泣いたら怒られる。殴られると思って必死に堪えていたけどやっぱり泣いてしまった。 「うるせぇないつも!誰の子なんだよ」 「お前との子だろうが!忘れたとは言わせねぇぞクソ男!」  聞きたくないし怖い。どうしよう、夢の続きをこんな形で見るなんて思わなかったし、正直見ないと思っていた。  震えも止まらない。怖い。怖い。
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