2・理想のモデルは何処にいる?

4/9
前へ
/212ページ
次へ
「お疲れさま」  濃紺のマニッシュなピンストライプのジャケットにタイトスカート。  身体のラインにぴったり沿った服を憎らしいほどスマートに着こなしている。  近藤紗加(さやか)はこのスタジオの共同経営者。  いや、おれは写真を撮るしか能がないから、実質的には彼女一人で仕切っていると言ったほうが正解だろう。  英語、フランス語ともに堪能で容姿端麗、頭脳明晰、非の打ちどころのない才女だ。  年齢不詳。たぶん、三十代半ば、かな。   「首尾はどう?」 「ばっちり。もうIDも教えたし」  ぱしっと頭をはたかれる。 「イテっ」 「そっちじゃなくて撮影のほうよ。順調に行けた?」 「ああ。里奈ちゃん、なかなか勘のいい子でさ。今日は楽勝だった」
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

634人が本棚に入れています
本棚に追加