11人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「芳人、そうは言っても北峰ちゃんと素敵な思い出作りをするチャンスだろ?!」祥介の顔は真剣だ。
祥介はいいよ。テニス部の部長だった北峰さんと部長同士で何度も話した間柄。
「そうだな。噂によれば、心春ちゃんは誰からの誘いにも応じてないらしい。これはチャンスなんじゃないか?」悟が訳知り顔をする。
悟はいいよ。北峰さんと同じクラスで秋の文化祭の出し物で劇の共演をしてから、名前で呼び合う仲になったとか。そりゃ、余裕あるでしょ。
「うーん……」
僕には北峰さんとの共通点が何一つないんだ。悔しいけど認識すらされてないと思う……
そんな僕に追い打ちをかけるような悟の衝撃発言が飛び出した。
「心春ちゃん、女子大付属に進学しちまうんだぞ」
「え? まさかっ!! だって、公立一緒に受かっただろう?!」
あんなに、あんなに頑張って勉強したのは、せめて北峰さんと同じ高校へ通いたかったからだ。それなのに……
僕は目の前が一瞬暗くなった。
「あれはな、心春ちゃんが親に女子大付属を受験する為の条件にしたって話」
そんな……嘘だろ?
誰か嘘だと言ってくれー!
そんな、そんな…… 卒業したら北峰さんを見ることさえ叶わなくなるなんて。今までそんな可能性をひとつも考えたことがなかった。
まわりの情報に疎い自分に強烈に嫌気がさしたのと同時にショックを受け過ぎ、僕の顔が青褪めた。
すると、いきなり教室のドアがガラガラッと開いた。
最初のコメントを投稿しよう!