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野良猫の生き方はシンプルだ。
縄張りを見回り、そこで狩りをして、後はのんびりする。
師匠の縄張りには寺とか言う所があって、裏の山で食べ物を調達するには困らなかったし、訪れる人間に声を掛けると餌を渡して来る者さえ居た。
師匠はこの寺の四角い石が並んだ所の一つがお気に入りで、よくその上に居てはじっとしていたり何か考えている様に見上げていたりした。
日中温められた石の上はほんのりと温かかったしうるさい音を立てる物も無く猫には居心地のいい場所と言えた。
僕も良くその辺りに居たけれど、お気に入りの石に乗る事だけは許されなかった。
縄張り巡回の途中僕がした質問に、人間の子供が路に描いた絵に座り込んで師匠は言った。
「野良犬は居ないな」
僕は師匠の傍にすり寄りながらさらに尋ねた。
「どうして野良猫は居ても野良犬は居ないんですか」
師匠は前足で僕を押し返しつつそれに答える。
「犬は野良に向かない。奴らは猫の様に一匹で生きられぬのだ。結果人間に不都合な振る舞いになる。そう言うものを人間は処分する」
「説明が雑すぎます! 」
僕は必死に師匠をその場から退かそうと試みるが石の様に動かない。
「猫と犬を同列に扱うでない。根本が違うのだ」
「師匠!ずるいですよ!ずっと太陽の上に居座って!代わって下さいよ! 」
僕の抗議にも師匠は動じない。
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