猫の生き方

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 塀とか言う物や屋根と言う場所を知り合ったばかりの三毛猫について歩きながら僕は様々な事を教えられた。  師匠はこの辺りを縄張りに持つ野良猫だそうだ。縄張りとは自分の領域で守れない者は生き残れないそうだ。  猫には二種類の生き方があり人間を利用する事は共通だが、飼い猫は人間の家に入り込む生き方で、野良猫は距離を置く暮らしをするそうだ。  師匠曰く野良猫こそ真の猫らしい。  縄張りは他の猫と共用の部分もあるとかで近隣に縄張りを持つ猫の顔は知って置く必要があるとか、そんな説明を受けながら見回る途中である建物を囲う塀の上に僕達二匹は並んで座っていた。  塀と建物の間には庭とか言う開けた場所があって、そこにあの人間が駆け出して来た。僕に餌をくれていたあの人間だ。ここに住んでいたんだ。  驚きと喜びを合わせた様な声で何か言っているが言葉を持たない彼らが言いたい事など分からない。  何度か声がトモエと聞こえた時だけ師匠の表情が緩んだ気がした。  人間の視線の前で師匠は僕の額に頭をこすりつけたり僕の毛繕いを始めたりした。ツンとしていた師匠が急に甘々になったものだから戸惑ったけどそうされるのは心地良くて、目が見える様になる前に感じた何かに似ていて思わず身を委ねていた。
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