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「あのさ、姉ちゃん最近急に変わったけどなんかあったの?」
「え」
若干引いたような目を向けられ、俺は少し身構えた。やっぱりその目、非常に姉に似ている。といっても最近は視線を向けられることもないのだけれども。
「紫苑、知らないの?」
「知らないよ。てことは、なにか理由があるんだ。……彼氏が出来たとか?」
「それは違うけど……、紫苑って意外と鈍いね」
「え?」
混乱する。
彼氏が出来たわけではない。でも俺が鈍い?
その言葉を額面通りに受け取れば、ひょっとしてひょっとすると、浅利さんの変化は俺のため??
「あっ、テレビ始まっちゃう! 紫苑、じゃあね!」
「えっ、あ……」
詳しく聞く間も与えられず、果歩はさっさと帰ってしまった。俺も混乱した頭のまま、自転車置き場に向かった。
果歩との会話を反芻する。
浅利さんが急にお洒落してくるようになったのが俺のせいだなんて、そんなことあるだろうか。
時期的には近い。俺がぽろりと告白してしまい、それから少し経って急に変わった。 あれ以来、意識されているのは分かる。でもそれは今まで恋愛対象じゃなかった男から急に告白されて、どう対応していいか分からず困っているのではないかと思っていたのだ。
――もし、俺の告白を好意的に受け止めてくれているとしたら。
いや、思い上がりはよくない。
これまで色々期待して、散々肩透かしを食らってきたのだ。というか、もし全然違ったときの俺のダメージがでかい。
俺は今の考えを振り切るように、自転車で風を切って帰った。
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