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「おばさんじゃないしッ! 私まだ29だし!」
私は顔を上げると、目の前で腰を曲げて顔を覗く男を睨む。
「よっ、荒れてんなおばさん」
「あんたに言われるとすっごい腹立つんですけど。私がおばさんなら、あんたもおじさんだからね」
「俺はおじさんだって認めてるから。ほら、一戸も潔く認めろよ。そしたら随分と楽になるぞー」
空いたブランコに二階堂が座ると、私は無視して二個目の缶ビールを開けた。夜だから私の存在なんて気づかれないと思ってたのに、この男気づきやがって。
「お前の彼氏、いや元カレ? できちゃった婚で結婚したな」
「何? 二股された挙句、フラれた私を笑いに来たの?」
「違うって。そんな性格悪いことはしないわ」
二階堂が笑うと、私は「どうだか」と言ってぐびっと飲む。
「やけ酒も良いけど、あんま飲みすぎんなよー」
「うるさい」
私はぐびぐびとビールを胃に流し込むと、それでも酔えない自分に嫌気が指した。今日はべろんべろんになるぐらい酔うって決めたのに、どうして酔えないんだ。酔いたい時に気持ち良く酔わせてよ。
「最低だな、お前の元カレ。お前、あいつが結婚するっていつ知ったの?」
「……今日」
「うわー、やっぱ最低だな」
「ほんと、最低……」
私はまたぐびっと飲むと、溜息を落とした。曇った空がさらに私に追い打ちをかける。何なら雨でも降ってくれたらな。そしたらまだ自分のことを笑えたのに、中途半端な天気になりやがって。
「なぁ、俺にもくれよビール。どうせいっぱい買ってんだろ? 金は払うからさ」
「嫌……」
「何だよ、ケチるなよー」
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