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私はぐびっと勢いよく飲むと、鼻を啜った。そろそろ三本目も空になりかけている。こんなにハイペースで飲んでるのに、全然酔えない。本当、最悪。
「でも良かったじゃん」
「は?」
「あいつがそういう奴だって、30になる前に気づいてさ。30になってからだとかなりキツイぞ。俺の姉貴もずっと付き合ってた奴に二股されたみたいで、その時もう32だったから相当荒れてた」
やれやれとでも言うように溜息を落とすと、私は「二階堂、お姉さんいたんだ」と言う。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「そういう話するほど、別に私ら仲良くないし」
「あー、確かに。ていうか、それなのにこんなデリケートな話をしてるんだ。不思議だね」
私は聞こえないフリをして三本目も全部飲み干すと、四本目の缶ビールに手を伸ばす。すると二階堂に腕を掴まれた。
「もう酔っぱらってるから、飲むな」
「まだ酔ってないし」
「いーや、完全に酔ってる。自分が酔ってないって思うぐらいに、酔ってる。夜はあんまお前の顔見えないけど、いつもと違うのは分かるよ。同期だし」
「あんま仲良くないのに?」
「仲良くない同期が分かるって言ってんだから、相当だろ?」
二階堂はレジ袋を私から遠ざけた場所に置くと、私は大人しくブランコの手すりに手をつける。
「好きだった? あいつのこと?」
またブランコに座った二階堂が聞くと、私は「傷えぐる気?」と言う。それを聞いて、乾いた笑い声が耳に届いた。
「好きだったよ、どうしようもなく好きだった。好きじゃなかったら5年も付き合わないし、多分二股にもすぐ気づいてたよ」
「どういう意味?」
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