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「……恋は盲目って言うでしょ? だから幸せしか見えてなくて、暗い部分が見えてなかったんだよ。いや、見ようとしなかったっていう方が正しいか。だからあいつのことがすっごく好きだった私は盲目で、二股に気づこうとしなかった」
私はブランコを漕ぎ始めると、「おいおい、吐くなよ?」と二階堂が言った。
「幸せって、何だろうな」
二階堂もブランコを漕ぎだすと、私は「哲学?」と突っ込む。
「幸せって、俺らが思ってるのが本当にそうなのかな? 案外、違うかもよ」
「意味分かんない」
「幸せって、この世がある限り永遠の謎だと思うんだよなぁ」
「ポエム?」
「違ぇよ」
二階堂が笑うと、私も可笑しくなって笑った。笑った瞬間、また涙がこみ上げてくる。笑いながら泣く、って本当どうかしてる。それぐらい好きだったんだな、あいつのこと。
あんなに愛おしかった名前も、今では死んでも呼びたくないけど。それでもいつも思い出すのは、悔しいぐらいにあいつなんだよな。
「なぁ、恋愛って楽しい?」
「それ、私に聞く?」
「あー、そっか」
また二階堂が笑うと、私はもっと高くブランコを漕いだ。二階堂もどんどんブランコを高く漕いでいく。深夜の公園で、アラサーの大人が何ブランコ漕いでるんだか。
「苦しいよな、誰かを好きになるって」
「……そうだね」
「でも、好きなものは好きなんだよなぁ。どうしようもなく好きなんだよなぁ」
「さっきから何? そんなポエムっぽいこと言う奴だったっけ、二階堂って」
「酔ってるからじゃね?」
「そっか」
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