ノクターン

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 私がブランコを漕ぐスピードを緩めると、段々と高さが無くなってくる。そして、止まった。気づいた二階堂もブランコを漕ぐのを止めると、さっきまでキコキコ言ってた音が無くなって、静寂に包まれた。 「酔ってるから言うけど、俺一戸のことガチで好きなんだよね。だからさっき残業って嘘吐いたけど、一戸のこと心配して後ついてきた」 「あー、そうなんだ」 「リアクション薄いなぁ」 「酔ってるからね」 「そっか」  私はブランコから立ち上がると、「行くの?」と二階堂が言った。私が足を止めて振り返ると、ブランコから立った二階堂が私のことを見ていた。 「悪いけど、二階堂の気持ちには答えられない。私はまだ、どうしようもなくあいつが好きだから。んだよね、この気持ちから。あんな最低なことされても、5年間ずっとあいつが好きだったから。簡単にこの気持ちは忘れられないよ」 「……そっか」 「レジ袋の中に入ってるビール、全部持って帰っていいよ。お金はいらない。それじゃ」  私は荷物を持ってゆっくりと前に進むと、「気を付けろよー」と後ろから二階堂に言われた。  結局、あんなことされてもまだ好きなんだよ。好きだから涙が出るし、好きだから怒ってるし、好きだから必死になって酔っ払おうとする。  真夜中は明け、少しだけ明るくなった暗闇に目を向ける。少しだけ星が輝いていた。あんなに曇ってたのに。空も、スッキリしたのかな。それとも、泣き止むまで待っててくれたのかな。
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