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僕は三毛猫。本当は雄だったけど、きょせーというものをしてしまったせいで雌とまちがえられるようになってしまった。僕が最初に知っている人間たちは、僕をきょせーしたせいで喧嘩をして、僕を外に放り出したんだけど、僕はその事に感謝している。外の世界は刺激的だ。
部屋の中、狭い檻の中にいるよりも、開放的でのびのびしている。お腹が空いたら人がたくさんいるところに行けば、何人かに一人が餌をくれるし優しくもしてくれる。
たまに乱暴してくる人間もいるが、上手く躱したり逃げることができた。中には、逃げることができない奴もいるけど、そいつらがどうなったのかは僕には分からない。
長い間、そんな暮らしをしていた。けど、とある大雨の日、僕は空腹で、迂闊にもいつもの寝処から外に出てしまい、雨に打たれて体力を消耗させてしまった。
(このまま死んじゃうのかな?)
そんな事は考えちゃいけないと、僕は最後の力を振り絞って鳴いた。誰かに気付いてほしくて。
そうしたら僕の声を聞きつけた人間の女がいて、その人に保護された。
温かい部屋に美味しいご飯をくれる彼女に、僕はすぐに心を許した。
最初の人間と違って檻に閉じ込めることもせず、僕が気に入ったクッションを快く貸してくれた上に部屋の中を自由にさせてくれた。
だから不満も何もない。
けど、彼女は僕をさとおや?というものに出したがっているみたい。
出ていきたくない。このまま、ずっとここにいられたらいいのになぁと思いながら僕は彼女の膝に頭を擦り付ける。すると、彼女は僕の不安を払拭させるかのようなタイミングで言った。
「大丈夫だよ、君が安心して暮らせるまで一緒にいてあげるからね」
『なあ!』
嬉しい。とても嬉しい。
僕は嬉しくて尻尾をパタパタと床に叩きつけて喜んだ。
雨の日に僕の声を聞いたのが君で本当に良かった。
そう思った。
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