ラブレター

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君は人目につかない場所で泣いていた。 どうしたの?ときくとなんでもないと言っていた。 そのまま君はどこかへ行ってしまった。 ずっと小さな頃から私は彼のことが好きだった。 彼が手紙を持っているのを見かけた。 いわゆるラブレターだ。 私はたまたまそれを目にした。 彼は友達に、今日渡しに行くんだ緊張するよ、と言っていた。 少し期待した。 いや、とても期待してしまっていた。 しかしいつも会うその場所に彼は来なかった。 別に待ち合わせをしているわけではなく、ただ、放課後に、たまに会ってそこでおしゃべりをするのだ。 私はそれが楽しかった。 でももう、彼は… 次の日、学校で彼を見かけた時、私の親友の女の子と楽しそうに話をしていた。 ああ、そうだったのかと私は思った。 泣き言ばかりが頭に浮かんだ。 昼休みは誰もいない校舎裏へ行き、1人でご飯を食べた。 食べていると、涙が出てきた。 我慢しようとしてもポロポロポロポロ止まらなかった。 そこに彼が来た。 どうしたの?と声をかけられた。 私は、この人のことを想って、こんな風になって、もう自分が嫌だった。 私はなんでもないと言い、その場を後にした。 教室で、親友に会った。 彼女は話があると言い、話を始めた。 初めに、彼のことをいい人だよねと私にきいてきた。 私はそうだねと答えた。 そして彼女は昨日彼といたのだと言った。 もう聞きたくなかった。 しかし始まった話はそう単純なものではなかった。 彼女は別のクラスの男に、私の連絡先をきかれていたのだと言う。 その男は私のことをつけ家も知っていたらしい。 それを噂で知っていた彼女はその男に私を売ることは決してしなかった。 連絡先の次は私の写真だとか別のものも要求をしてきたそうだ。 そして、拒み続けているとその男に襲われそうになった。 だが、大事には至らなかったらしい。 そこに彼が来たからだ。 彼は彼女を自分の後ろにして、男を睨みつけた。 彼女は彼に大まかな事情を話した。 彼の背中しか見えなかったらしいが、彼は拳を握り震えていたと言う。 男は彼に掴みかかろうとしたが、逆に手を掴まれ彼に投げられた。 そして彼は男に対して怒鳴りつけた。 失せろと。 男はそのまま逃げていったらしい。 その後彼は彼女を家まで送ったそうだ。 彼女と彼は、私の知らないところで私を守ってくれていたのだ。 ごめんね、ありがとうと口から漏れた。 彼女は笑って私は大丈夫だよと言った。 帰り道に彼と話をしたことを聞いた。 あの男のことを学校にいうか警察に突き出すかどうかを彼にきかれ、彼女は何もしなくていいと言ったらしい。 それと、彼が持っていたラブレターについてきいたらしいが、彼は最後まで言いにくそうにしていたようだ。 今日の朝のことも昨日のことを気にかけて彼が彼女に声をかけたのだと言う。 私は親友を抱きしめた。 親友も私を抱きしめた。 そして、じゃあまた後でねと言い、彼女はどこかへ行ってしまった。 私が教室に戻ろうとすると、誰かに呼び止められた。 彼だ。 彼は、私に手紙を差し出した。
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